2F展示室

19世紀ヨーロッパの染織、デザインコレクション




13代茲明胸像

西欧で収集した数々の染織パターン



 明治の中期、ヨーロッパ文化の啓蒙期にドイツに留学して美学・美術史を専攻した13代茲明(これあき)が、学術参考品として現地で収集した、染織、デザイン画、壁紙、インテリア用織物等の1万6千点に及ぶ図案資料を集大成したもので、この中から約50額装を選びご紹介しております。現存する貴重な資料として、我が国はもちろん、ヨーロッパ本国でも希少価値の高い資料です。






治9年に家督を継いだ13代茲明(これあき)は、西洋の知識を積極的に吸収しようと、19歳の若さでイギリスに留学し、早くからその才能を開花させています。続く明治19年には、美術を学ぶためにドイツに渡りました。美術を専攻するにあたっては、哲学者西周(にしあまね)から、

あなたは、恵まれている人である。よってこの際、他の人のやらない学問をすることが、国家社会に尽くすことにもなる。だから、誰もやらない美術や美学をおやりなさい。

との勧めがありました。実際、美術は茲明のライフワークとなり、西の助言は正に茲明の性格を見通した的確なものでした。



緻密なデザイン




鏡に映った自身を撮影

模写した作品

イツベルリン留学中は、染織技術の参考としてデザイン資料の収集、美術館や博物館を巡って名画を模写したり、美術研究の一助として写真技術を習得するなど、若き青年は寸暇を惜しんで美術の研究に没頭します。

 その成果は帰国後に美術論として記され、国立美術学校や美術館の創設を高官に建議するなど、日本の美術工芸分野に、Art(アート)が持つ意義を伝えるべく心血を注ぎました。

 熱意を持って集めたデザイン資料からは、現代の視点に於いても、決して色褪せない普遍的美しさを見いだすことができるでしょう。













実際に撮影した写真

1号機と、献上品と同一のアルバム


ハンディ機と付属品

清戦争が勃発すると、当時、明治天皇の侍従として仕えていた茲明は、会得した写真技術を国のために生かそうと従軍を願い出ました。ドイツから持ち帰った大型の写真機を荷車に乗せ、多くの助手を引き連れて戦地へ赴きました。

 不幸にして始まった戦争ですが、茲明の報道カメラマンとしての側面を引き出すことになりました。軍の状況だけでなく、戦禍に巻き込まれた人々をも撮影するなど、戦争の本質を見抜いたものになっています。

 写真はアルバムとしてまとめられ、明治天皇に献上されました。









念なことに、戦地での命がけの労苦は、ただでさえ弱かった身体をひどく痛めることになり、36歳という若さでこの世を去ることになりました。

 黎明期である政府の発展に、少しでも関与して、その成長過程をこの目で見据えたい、そのような人生ではなかったかと推察されます。

 2階の展示をご覧になることで、茲明の生涯の夢と情熱を感じとって頂けたら幸いです。









   

※会期によって展示構成が変わる場合があります。ご了承下さい。